イベント
記者ブログ「取材現場から」
事件は現場で起きている―。どこかの映画のせりふのようですが、実際に取材現場ではいったい何が起きているのでしょうか。一線の記者は、どうやって取材し、記事を書いているのでしょうか。そんな疑問に答え、記者たちの生の姿に接することができるのが「取材現場から(記者ブログ)」のコーナーです。
執筆した共同通信の記者たちの中から、首相番の1日を書いた政治部の原口剛さん、警視庁1課(殺人、強盗など強行犯)担当の社会部・三吉聖悟さん、「ヘリ墜落現場での日本テレビ記者遭難」を取材したさいたま支局の小笠原慎二さんの3人に登場してもらい、仕事への思いや苦労している点などをインタビューしました。
【泥くさい仕事】
●想像していた記者の仕事と、実際の仕事は違いましたか。
(原口)学生のころは、記者の最大の仕事は「書く」ことだと思っていました。しかし、いい記事を書くためには、その何十倍もの労力を使って「聞く」ことが必要なのだと知りました。記事の材料となる情報を得るには、取材相手に好かれる努力や粘り強く取材する体力が必要です。想像していたよりも、ずっと泥くさい仕事でした。
(三吉)大変だろうという予想は、その通りでした。朝早くて夜遅く、呼び出しは容赦なく。ある先輩から「記者の仕事は待つことだ」と言われたことがありますが、待ち時間に費やす時間がこれほど多いとは思いませんでした。
(小笠原)推理小説やノンフィクションを読んで想像していた記者像と、日常の仕事にさほど違いはなかったが、事件、事故の現場や、重要な記者会見に1人で出席したときの緊張感は、自分で体感するまでわかりませんでした。
●小笠原さんは、ヘリ墜落現場に向かおうとして遭難した日テレ記者のように、取材活動で死ぬこともあるということを目の当たりにしたわけですが、それから気構えは変わりましたか。
(小笠原)危ない場所で、間違った取材手法をとれば、命を落とす危険性があることは再認識しました。
●他社の記者とはどういう付き合いをしているのですか。
(小笠原)日々しのぎを削るライバル関係にありながらも、取材が終われば同年代の仲間。朝まで卓を囲んだり、ガード下に集まったり。
【本当のデカは怖い】
●ドラマでは、刑事や新聞記者がよく登場しますが、あれを見てどう思いますか。
(三吉)最近のドラマは捜査員がつけている専用のバッジなど細部までよく再現されていて感心します。しかし、さすがに刑事が持つあのすごみというか、迫力、近づきがたい雰囲気まではなかなか演じられるものではないのだなあと思います。本当のデカは怖い。
ドラマに出てくる新聞記者みたいにぽんぽんとネタが取れると良いのですが。
●政治家に利用されないように、気を付けていることは?
(原口)できるだけ政治家の「言葉の裏側」を読み解こうと努力しています。多くの政治家は、よほど記者との信頼関係がなければ本当に聞きたいことは簡単に教えてくれません。言葉を額面通りに受け取っていては「ちょうちん記事」だらけになってしまいます。言葉の裏側にある意味を探り、それらを集めてひとつの真実にたどり着く。難しい仕事ですが、政治記者の醍醐味でもあります。
●今後、どんな記事を書いていきたいですか。
(三吉)一番はもちろん特ダネです。二番も三番も特ダネです。ただ、たとえ紙面上の扱いが小さくとも自分が書かなければ世に出ることがないといったような、独自取材に基づく記事は大切にしたいです。
(小笠原)第一に「志は高く、目線は低く」、這いつくばって取材する記者でいたい。その上で、どのような事象についても、従来の新聞報道にこだわらない、多角的な見方を発掘したいと思っています。
(原口)かつての「小泉劇場」や昨年の政権交代のようなダイナミックな動きなら国民も分かりやすく、面白いでしょう。しかし、政治の多くの場面は「そんなことやってるんだ」という地道な協議や交渉の繰り返し。取材する側が面白いと思っても、読者の興味を引いているのか不安になる時はあります。私が記者になった動機は、その距離を縮めることでした。いつか、どんな難しいテーマでも「分かりやすい」「面白い」と思ってもらえるような記事を書けるようになりたいと思います。
●ネットユーザーはマスコミに対して「信用できない」と不信感を持っている人もいるようですが、それに対してどう応えていきたいと思いますか。
(原口)政治部の取材も、一般の方から見たら必要以上に政権や政治家を批判したり、あたかも世論を誘導しているように映るかもしれません。実際、そういう見方をされても仕方のない部分もあると思います。記者は「木を見て森を見ず」にならない取材を心掛け、きちんと記事の意義を説明することが大事だと思います。
(三吉)私は、ネットユーザーがマスコミにたいしてそれほど強い不信感を持っているとは思いません。2ちゃんねるなどの掲示板サイトでは、マスコミの記事が情報源として引用されることは少なくありません。一方で「マスゴミ」という言葉が示すように、強い反感を持っているユーザーは多い。それについては、正確な記事を出し、弱きを守り強きをくじく報道を続けるのが一番の対応だと思います。また、メディアスクラムなど、自分たちでも問題だと思うところを改善していくのも必要だと思います。しかし、何となく気にくわないからというか、実際的なものに拠っていない批判も多いので、すべてを真っ正面から受け止めて投げ返すのは難しいとも思っています。
(小笠原)「マスコミは、恣意的に情報操作している」といった不信感だと思うのですが、徹底的にファクトを積み重ねた記事で応えていく以外にないと思います。ネット上の言論空間でも、新聞記事を「ネタ」に議論が沸騰することもあります。安易な考えかもしれませんが、その議論を生み出す源の記事が、事実に迫る記者の息遣いが聞こえるようなものなら、不信感は薄まり、熱中して読んでもらえるのではないでしょうか。新聞記事が「ベタ」すぎて、ネットユーザーは「しらじらしい」と感じているのかもしれない、と個人的には思います。
<3人の経歴>
(原口)2002年4月、読売新聞大阪本社入社。04年12月、共同通信社入社。今年5月より政治部。鳩山由紀夫、菅直人首相の番記者を担当し、現在は自民党の石原伸晃幹事長や社民党を取材。34歳。
(三吉)2005年4月、共同通信社入社。佐賀、神戸支局でそれぞれ2年間勤務し、09年5月から社会部。今春から警視庁捜査1課を担当。28歳。
(小笠原)2006年、共同通信社入社。大阪社会部、大津支局を経て、09年春からさいたま支局で埼玉県警を担当。27歳。


