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クマが出没していますが、射殺以外の解決方法はないの?

Q:あちこちでクマが出没していますが、射殺以外の解決方法はないのでしょうか?

A:日本には北海道にヒグマ、本州と四国にツキノワグマが生息しています。環境省によると、いずれも「地域によっては絶滅の恐れがある地域個体群」に指定されています。九州にもツキノワグマが生息しているとされていましたが、1950年代ごろに絶滅したと考えられています。


クマ出没


今年は本州各地でツキノワグマの目撃や捕獲が相次いでいます。環境省によると、本年度は10月末までに全国で約3千頭のクマが捕獲され、うち9割に当たる約2700頭が殺処分されました。07~09年度に比べツキノワグマの捕獲頭数が大幅に増えています。

今年ツキノワグマの出没頻度が増えている背景として、日本クマネットワークの大井徹・副代表は、エサであるドングリ類の不作を最大の要因とし、ほかに森林と人里との緩衝地帯だった里山の機能喪失や狩猟が減り、クマが人間を恐れなくなったことなどを挙げています。

捕獲した場合、殺処分以外の対処方法としては、山に返す放獣と動物園やクマ牧場に引き取ってもらうケースがあります。大半は放獣され、引き取られるケースは非常にまれです。

殺処分が多いのは、放獣先の山の所有者や地域の代表の許可や理解が得られないといった事情があるようです。エサが凶作のため、放獣後に再び人里に降りてくるのではと懸念しているのです。

環境省では、ツキノワグマの生息域のうち、頭数の多い東日本以外では、人に危害を加えた場合などをのぞき、個体群を維持するために学習放獣と呼ばれる方法を推進しています。

学習放獣とは、捕獲したクマにトウガラシスプレーを吹き掛けたり、花火や爆竹で驚かしたりして、人間に対する恐怖心を植え付けて山林に返す方法です。放獣前に耳などに個体識別番号やマイクロチップを取り付けます。

放獣されたクマが2度目に捕獲された場合には、学習能力がないということで殺処分されます。


クマ出没


引き取られるケースが少ないのは、動物園などの施設の収容能力に限界があることが大きな理由のようです。既に一定の数を飼育している施設では、新たに引き受ける余裕がないのです。

また捕獲されたクマは野生であり、寄生虫の有無や感染症にかかっていないか、血液やふん便を検査する必要があります。検査には2週間~1カ月かかり、経費も必要で、引き取りが少ない一因になっているようです。

愛知県豊田市の養鶏場近くで10月、子グマ2頭を含む3頭のツキノワグマが捕獲され、市が100以上の施設に当たった結果、引き取り先が秋田県の八幡平クマ牧場に決まりました。ヒグマ4頭をオリから放牧場に移す予定と重なったことや、環境の変化に適応力があり、集客力のある子グマが2頭いたことが理由です。

大井副代表は「学習放獣の際には危険を伴うこともある。行政は野生動物の管理に関する専門家を地域に配置するべきで、地域住民と協議しながら、放獣や殺処分など安全で有効な対処方法を決める必要がある」と話しています。(共同通信社会部記者)