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電力会社はどうして地域独占なの? 電力は自由化されないの?

電力

Q:東京電力福島第1原発の事故以来、東電から電気を買わない方法はないかと思ったのですが、なぜ日本では地域ごとに独占企業が許されているのでしょうか。電力の自由化の動きはないのでしょうか。

A:東京電力は、1都8県の広域に渡って幅広く電力供給を行っています。日本では各電力会社が電力の生産から販売に至るまでを一貫運営し、その地域の顧客に供給しています。これには歴史的な経緯があるので、まずその辺から説明しましょう。

明治時代に多数乱立していた電力会社は、大正時代に5社に再編されました。戦時中には電力事業が国家管理となったことで、国策会社「日本発送電」が発電と送電を支配。電力を供給する配電を9社が担うようになりました。

第2次世界大戦後の1951年、日本発送電が分割・民営化されて9電力会社が誕生し、発送電一体型の地域独占体制が確立しました。沖縄復帰に伴って72年に発足した沖縄電力を加え、現在の10電力体制となっています。

海外に目を向けると、英国では90年に、当時国営だった電力会社の発送電を分離し、欧州でいち早く電力自由化に踏み切ったほか、日本同様に地域独占形態だったドイツも送電部門を子会社化しました。

これらの国では「グリーン料金」と呼ばれる制度も導入され、家庭は風力発電など再生可能エネルギーを供給する専門業者からのみ供給を受けることも出来ます。

こうした海外における電力自由化の高まりを受けて、日本でも96年に電力会社に電気を販売する卸発電事業、2000年には大口顧客に対する電力販売が自由化されました。

工場の広大な敷地に大規模な自家発電設備をもつ鉄鋼・化学メーカーなどが、余剰電力を利用した発電事業に参入しました。自由化の対象はその後、工場やデパートまで拡大されましたが、新規参入の動きは限定的にとどまりました。

電力会社は「電力を安定的に供給するには現行の供給体制維持が不可欠」と主張、地域独占見直しや発送電分離といった改革には反対してきました。

こうした動きもあり、経産省の総合資源エネルギー調査会は2007年、一般家庭も含めた全面自由化について「家庭に電力を供給する新規参入事業者が見込めない」といった理由で見送りました。

原発事故を踏まえて、政府は太陽光発電などの再生可能エネルギーを強化していく方針です。太陽光や風力、地熱発電などは、発電量が原発と比べて小さいので、地域分散型の発電が見直されるはずです。

分散発電した電気を、効率的に利用するためIT技術を駆使したスマートグリッドの導入も進むでしょう。こうした動きが、電力の地域独占に「風穴」を開ける可能性もあります。

菅直人首相は5月、電力会社の発電と送電の分離など事業形態の在り方まで含めて議論する考えを示しました。政権が代わったとしても、地域独占体制の見直しを含めた抜本的な電力改革が議論されていくことになるでしょう。(共同通信経済部記者)