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福島原発事故はチェルノブイリ事故とどう違うの?


福島原発


Q:福島第1原発事故は、最悪のレベル7とされた上、1号機から3号機まですべてメルトダウンしていたことが明らかになりました。チェルノブイリ事故とどこがどう違うの?

A:チェルノブイリの事故は、試運転中に発生した事故です。制御棒を操作して、出力を抑えようとしていた時に出力が急激に上がり、炉心溶解が発生しました。そこから水蒸気爆発が起き、圧力容器が壊れてしまい、原子炉内の燃料が環境中に放出されてしまいました。

続いて減速材に使われていた黒鉛に火がつき、大規模な火災に発展しました。炉心溶解している中での火災で、その火災によって、より多くの放射性物質が外部にまき散らされる大事故になりました。

原子炉の分類は核燃料、減速材、冷却方法などで分けられます。現在、チェルノブイリと同じような黒鉛を使った原子炉は、ロシアにいくつかある程度で、その他の世界の原子炉は基本的には水を減速材としているタイプです。

福島第1原子力発電所の原子炉も水を減速材に利用する型で、沸騰水型原子炉(BWR)と呼ばれています。

チェルノブイリのように黒鉛による火事の心配はなく、また格納容器が放射性物質の放出を防ぐ役割を果たすため、格納容器のないチェルノブイリ型より福島第1型の方が相対的に危険性は低いと考えられています。

福島第1原発事故では、主な放射性物質の漏れは核燃料の燃えカスとも言えるもので、核燃料から出た揮発性の物質やガスが放出されました。一方チェルノブイリでは、その発生源たる核燃料自身が飛び散って、さらに火災によって周辺へまき散らしました。

チェルノブイリ事故と、福島第1原発事故の違いをわかりやすく説明した「おなかがいたくなった原発くん」というアニメがネット上で評判となっています。

これは、原発事故の危険性をにおいに例えて、においだけのおならと、においの元となるうんちの違いで、小さな子供にも原発事故の状況がわかりやすいようにと作られたアニメです。

今回の福島第1原発事故は、お腹が痛くなった原発君がうんちを漏らしそうになってしまっている状態、チェルノブイリちゃんはうんちを漏らした上に走り回ってまき散らしてしまった状態と設定されています。

原発君は大きな音がして周りの人々がびっくりしたものの、漏れたのはうんちではなくおならだった、というものです。うんちがまき散らされていない点でチェルノブイリとの対比がわかりやすく描かれています。

国際原子力事象評価尺度(INES)のレベル7とは、評価基準の一つに「計画された広範な対策の実施を必要とするような、広範囲の健康および環境への影響を伴う放射性物質の大規模な放出」とあり、環境への放射性物質の放出量がヨウ素131換算数万テラベクレル以上で、この基準に相当するといわれています。

この評価からすると福島第1原発事故はレベル7ですが、レベル7は最高の評価で、それ以上であれば全てレベル7と認定されます。4月12日の原子力安全委員会の推定では事故発生以降の放射性物質の総放出量は63万テラベクレルです。これはチェルノブイリの1割程度とも言えます。

事故直後に大規模な放出があり、それ以降は1日あたり100テラベクレル程度で推移していることを考えると、チェルノブイリの放出量を超える可能性は低いでしょう。

ただし、100テラベクレルは普通に考えれば大変多く、未だ事故は続いており予断の許さない状況ですが、見方によっては悪いなりに安定しているとも言え、これ以上の大きな被害の心配は少ないと思われます。(共同通信記者)